言語聴覚士の年収はどのくらい?年収アップの方法や年収別の働き方を解説
言語聴覚士は、ことばに関するコミュニケーションや摂食や嚥下に問題がある人のリハビリテーションを行います。言語聴覚士の仕事に興味がある人の中には、仕事内容に加えて、年収やキャリアが気になるという人もいるかもしれません。
言語聴覚士の平均年収をはじめ、言語聴覚士としての働き方や、言語聴覚士として年収を上げる方法などを解説します。言語聴覚士になってから「思っていた年収や環境と違う」といったミスマッチを起こさないためにも、言語聴覚士の年収と将来を見据えたキャリアについて理解を深めましょう。
言語聴覚士の平均年収
厚生労働省が公開している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、令和4年度における言語聴覚士を含むリハビリテーション専門職の平均年収は以下の通りでした。
年齢 | 平均月収 | 平均年間賞与 | 平均年収 |
20~24歳 | 25万2,300円 | 33万200円 | 335万7,800円 |
25~29歳 | 27万1,900円 | 65万7,600円 | 392万400円 |
30~34歳 | 29万2,900円 | 69万9,300円 | 421万4,100円 |
35~39歳 | 31万7,400円 | 74万6,100円 | 455万4,900円 |
40~44歳 | 34万1,200円 | 88万1,400円 | 497万5,800円 |
45~49歳 | 35万4,400円 | 92万7,100円 | 517万9,900円 |
50~54歳 | 34万6,400円 | 99万3,600円 | 515万400円 |
55~59歳 | 38万8,100円 | 104万4,600円 | 570万1,800円 |
60~64歳 | 32万8,400円 | 68万7,500円 | 462万8,300円 |
65~69歳 | 31万5,700円 | 88万1,000円 | 466万9,400円 |
※参照:厚生労働省.「令和4年賃金構造基本統計調査」.“職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
”.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001202310&tclass2=000001202312&tclass3=000001202329&tclass4val=0 ,(2023-03-17)
年齢別の平均年収では、55~59歳頃の年収が最も高くなっています。これは、年齢を重ねるにつれて言語聴覚士としてのスキルや知識が向上し、さらに責任ある業務を任されることが多いからであると推測されます。加えて、60歳で定年を迎えるケースが多いことも影響しているでしょう。
また60歳以降は、再就職をしたりパートとして働いたりするケースもあることから、年収が減少傾向になっていると考えられます。
職場ごとの言語聴覚士の平均年収
介護福祉施設
介護福祉施設とは、介護老人保健施設や特別養護老人ホームやデイサービス、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなどです。
平均年収は340~420万円程度だといわれています。
しかし今後高齢化がますます進むことによって、介護施設の求人数は増える可能性があります。また介護に関係する専門職の中でも、言語聴覚士は有資格者が比較的少ないです。そのため言語聴覚士の需要は高く、今後給与がアップする可能性もあるでしょう。
医療施設
医療施設とは、病院やクリニック、リハビリテーションセンターなどです。
平均年収は350~510万円程度といわれています。
医療施設は求人の数が多いため、どこで働くかによって給与の幅があることが考えられます。上記の平均年収よりも高くなることも十分考えられるでしょう。
福祉施設
福祉施設とは、重症心身障害児施設や肢体不自由児施設、療育施設などです。
平均年収は340~420万円程度であることが多いといわれています。
介護福祉施設と比較すると求人数は少ないものの、発達の遅れや何らかの疾患により、言語障害を持つ子どもたちのサポートをすることが多いです。そのため特に子どもが好きな人にとって、福祉施設はやりがいを感じられる職場であるといえるでしょう。
言語聴覚士の年収と働き方の例
言語聴覚士は働き方によっては、500万円程度、800万程度、1,000万円程度と年収をアップさせながら働くことが可能です。
もちろん実際に同様の年収が得られるかどうかは、働く環境などによって異なります。参考までに、どのような働きをすればどの程度の年収を得られるのかを、考えてみましょう。
500万円
先にご紹介した言語聴覚士の平均年収から考えても、年収500万円台は現実的な年収であるといえるでしょう。45歳から59歳の平均年収は500万円を超えることが明らかになっているため、キャリアを重ねれば無理なく目指せる年収だと考えられます。
なお言語聴覚士は需要に対して人数が少ない傾向です。しかし今後人材が増えていくことを考えると、年収アップのため、スキルや知識を磨いておいた方が良いでしょう。
できるだけ早く500万円台の年収を目指すのであれば、ベースの給料が高く、インセンティブ制度のある施設を選ぶことをおすすめします。学会発表や勉強会の主催といった仕事を任される機会の仕事であれば、インセンティブが発生することも考えられるでしょう。
800万円
言語聴覚士の平均年収から考えても、年収800万円は言語聴覚士にとっては簡単に得られる金額ではありません。一般的な施設における業務だけで年収800万円を目指すことは難しく、ベースの給料が高い勤務先や、インセンティブ制度のある施設で高い評価を得ることが求められるでしょう。
一般企業において臨床の知識やスキルが生かせる場合、あるいは副業ができる職場であれば、目指せる可能性もある金額であるといえます。
1,000万円
結論から述べると、言語聴覚士として年収1,000万円を目指すことはかなり難しいといえるでしょう。年収1,000万円に近づくには、800万円を目指す際にご紹介した、臨床の知識やスキルが生かせる一般企業で働くことが必要だと考えられます。
またオリジナリティのあるセミナーを開催するなど、副業を行うに当たっての高いスキルを身に付け、知名度を上げる、人脈を拡大するなどの努力が必要でしょう。可能性はゼロではありませんが、言語聴覚士としてはかなりレアケースと考えておいて良いでしょう。
言語聴覚士として年収を上げる方法
言語聴覚士が年収を上げる方法としては、主に以下の5つがあります。言語聴覚士として就職したら、それぞれの方法を念頭に置きながら、キャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。
1. 資格を取得する
1つ目は、言語聴覚士の資格に加えて、言語聴覚士の仕事に役立つ知識やスキルを身に付けるために、資格を取得する方法です。
具体的には、以下のような資格が挙げられます。
- 認定言語聴覚士
- 呼吸ケア指導士
- 心理カウンセラー
- 手話通訳士 など
認定言語聴覚士は、日本言語聴覚士協会が作った資格です。認定言語聴覚士制度は、高度な知識や熟練した技術を用い、高水準の業務を遂行できる言語聴覚士を養成し、業務の質の向上を目指し、社会に寄与することなどを目的としています。
もちろん資格を取得したからといって、すぐに給与が上がるとはいえません。しかし資格は言語聴覚士としての確かなスキルがあることを証明できるものでもあります。各領域での専門性を高めることで、より効果的なリハビリテーションを行えるようになり、結果として、給与アップにつながる可能性はあるでしょう。
言語聴覚士に適した資格は、実務だけではなく転職する際にも役立ちます。そのため言語聴覚士を目指すのであれば、資格の取得についても前向きに検討しましょう。
2. 言語聴覚士として勤続年数を重ねる
2つ目は、言語聴覚士として勤続年数を重ねることです。基本的に医療機関や介護福祉施設では、年功序列による昇給の文化が根強く残っています。そのため給与規定に従い、年1回は昇給するチャンスがあるケースがほとんどです。言語聴覚士として一つの職場で可能な限り長く働ければ、自然と給料がアップすることが考えられるでしょう。
転職をして給料をアップさせる方法もありますが、長く働きたいと思えるような職場は、給与にも勝る価値があるともいえます。そのような場合は、勤続年数を重ねることによる給与アップを検討すると良いでしょう。
3. 副業する
3つ目は、副業をすることです。副業可能な職場であれば、資格を生かした副業によって年収のアップを狙えます。
言語聴覚士が行う副業としては、他の施設での非常勤勤務でのアルバイトが挙げられるでしょう。具体的には、平日は病院で正職員として働き、休日は訪問リハビリテーション施設で働くといった働き方です。
他にも、十分なスキルや知識があれば、同業者向けのセミナーを開催したり、オンラインサロンを開いたりすることも可能でしょう。副業がうまくいけば、将来的に独立も考えられるかもしれません。
ただし副業をする人は本業の休日に働くケースが多く、体力的に厳しい面もあります。またそもそも副業を禁止している職場もあるため、事前の確認は必須です。
4. 転職する
4つ目は、転職することです。言語聴覚士の年収は、企業の運営希望や経営状態に加え、地域によっても相場が異なります。
言語聴覚士の勤務先である介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの福祉施設は、介護職員等特定処遇改善加算を申請によって取得できます。これは、介護に関わる仕事をする人の給与が低いという現状を改善するために制定された加算です。介護職員等特定処遇改善加算は、言語聴覚士にも分配される可能性があります。そのため転職を検討する際には、転職先がどの程度処遇改善加算を配分しているのか、あるいは分配していないのかを確認しておきましょう。
5. 起業する
最後に、言語聴覚士としての知識やスキルを身につけて、起業するというのも一つの方法です。フリーランスとして働く人は、自分の都合でスケジュールを組みやすくなる場合もあります。そのためワークライフバランスを重視したい人は、起業によって働きやすい環境を手に入れられるかもしれません。
また新しいサービスやプログラムを開発し、提供できれば、収入だけではなく社会への貢献にも大いに役立ちます。ただし起業には入念な準備が必要です。起業を目指すのであれば、積極的に資金を準備し、人脈を作りましょう。
言語聴覚士は工夫次第で年収アップにつながる
言語聴覚士の給与アップを目指すには、資格を取得する方法や勤続年数を重ねる方法、副業・転職をする方法などが考えられます。工夫次第で年収アップを狙えるでしょう。
言語聴覚士は、話すことや嚥下などで困っている人をサポートするという社会的にも貢献度の高い仕事であり、やりがいも多い仕事です。言語聴覚士として長く勤めるためには、資格を取得し、年収だけでなくスキルの向上も目指すのがおすすめです。
言語聴覚士国家試験受験資格は、短期大学に通学することで取得できます。言語聴覚士の仕事に興味がある人は、仙台青葉学院短期大学の言語聴覚学科にお問い合わせください。仙台青葉学院短期大学は、言語聴覚士に必要な知識やスキルが身に付くカリキュラムを用意し、資格の取得までサポートしています。