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救急救命士

救急救命士は女性も活躍できる?
女性の割合や活躍する方の特徴について解説

命に関わる状態の傷病者に対して、医師の指示の下、救急救命処置を行うのが救急救命士です。救急救命士は男性が多く活躍しているイメージが強いかもしれませんが、実際は女性の救急救命士も活躍しています。

救急救命士の仕事に興味がある女性に向けて、女性救急救命士の割合や活躍できる方の特徴などを詳しく解説します。

救急救命士として働く女性の割合 活躍できる方の特徴 救急救命士の平均年収 女性としての強みと生かし方 女性が救急救命士を目指す方法 救急救命士を選択した女性のキャリアステップ 女性が救急救命士を目指すなら、専門の養成学校がおすすめ

救急救命士として働く女性の割合

2024年救急救命士国家試験では、合格者3,137人のうち、男性が2,849人、女性が288人でした。女性の割合は、およそ9.2%です(※1)。

また多くの救急救命士は消防署で働くことになりますが、東京消防庁の消防吏員に占める女性消防吏員割合は、平成28年が6.39%、令和6年は7.16%でした(※2)。東京消防庁における女性消防吏員の割合は年々増加傾向にはあるものの、10%未満となっており、女性の救急救命士はまだ少ない状況だといえるでしょう。

※1  参考:厚生労働省.「第47回救急救命士国家試験の合格発表」.
  https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000200942_00006.html ,(参照2024-07-23)

※2  参考:東京消防庁.「東京消防庁における女性活躍推進に関する状況」.“1 消防吏員に占める女性消防吏員割合”.
  https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/kk/woman1.html  ,(参照2024-07-18)

消防吏員とは

消防吏員とは、階級を有しており、消火活動中の緊急措置や消防法上の権限を有する職員のことをいいます。令和5年4月1日時点で、消防吏員は全国で16万6,287人いますが、そのうち女性は5,829人です(※1)。

消防本部では、昭和44年に初めて女性消防吏員が採用されました。当時は主婦や高齢者、子どもなどに対する防火・防災教育などの予防業務が、女性消防吏員の主な活躍の場でした。しかし平成6年に女子労働基準規則(現・女性労働基準規則)が一部改正されたことで、女性消防吏員の深夜業の規制が解除に。救急隊や消防隊といった交代勤務の業務も行えるようになりました(※2)。

なお東京消防庁では、2026年当初までに女性消防吏員を8%以上にすることを目標としています。東京消防庁特定事業主行動計画には、女性の消防吏員が増えるよう、採用試験の応募者数増加のための取り組みの推進やキャリア形成の支援、男性職員の家庭生活への参加促進などの施策を重点的に行うことが定められています。

※1  参考:総務省消防庁.
  「女性消防吏員の活躍推進」.“女性消防吏員について”.
  https://www.fdma.go.jp/relocation/josei_shokuin/josei-shokuin001.html ,(参照2024-07-18)

※2  参考:東京消防庁.
  「東京消防庁特定事業主行動計画~女性職員の更なる活躍とワーク・ライフ・バランスの推進に向けて~」.
  https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/kk/pdf-data/tokuteijigyou.pdf  ,(参照2024-07-18)

活躍できる方の特徴

救急救命士として活躍できる方の特徴に、男女差はないといえるでしょう。具体的には次のような方が救急救命士として活躍できると考えられます。

体力がある方

消防署に勤務する救急救命士のほとんどは、24時間勤務の交代制で仕事を行います。当番日と非番日、公休を繰り返す生活のため、生活リズムが不規則になりやすい傾向です。さらに勤務時間中は、常に緊張感を持って待機しなければなりません。そのため体力面はもちろん、精神面の強さも求められるでしょう。

また救急救命士は非番日であっても、緊急の呼び出しがあれば出勤することになります。そのため非番日も緊張感を持って行動することが必要です。

以上のことから、救急救命士として働き続けるためには、強靭な体力と精神力が必要であると考えられます。

責任感や使命感が強い方

救急救命士は、人の命に関わる責任の重い仕事です。そのため「自分が助けなければ」という強い責任感や使命感がある方でなければ務まらないでしょう。

救急救命士は基本的に、医師の指示に従って救急救命処置を行います。しかし場合によっては、自分自身の判断で処置しなければならないこともあります。もちろん一刻を争う場面に遭遇する可能性もあるでしょう。

以上のことから、救急救命士を目指すのであれば、確固たる動機を持って挑んだ方が良いといえます。

勤勉な方

救急救命士は、日々の勉強や訓練による、知識・技術のアップデートが欠かせません。人の生命と向き合う救急救命士は、基礎的なことはもちろん、応用的なことまで幅広くカバーしなければ、その場で最善と考えられる対応ができないためです。

待機時間中に訓練したり、医療機器や医療技術に関する最新情報を集めたりするなど、貪欲に学び続ける勤勉さが求められるでしょう。

冷静沈着な方

救急救命士は重篤な傷病者に対応することも多く、現場や救急車内でその都度、冷静な判断を下す必要があります。またさまざまな医療機器を使い分け、迅速に治療に当たる行動力も必要です。過酷な状況を目の前にしてパニックになったり、行動できなくなったりするようでは、業務が務まりません。

つまり場面に応じて冷静沈着に判断し、行動できる方が救急救命士に向いているといえるでしょう。

救急救命士の平均年収

救急救命士の資格取得者は、各自治体の消防署で消防士として勤務するケースが多いようです。総務省の調査によると、地方公務員である消防職の月収の全国平均は、40万3,520円となっており、期末手当や勤勉手当も含む年収平均は636万3,404円となっています(※1)。

地方公務員である救急救命士は、収入も安定しやすいと考えられるでしょう。また女性救急救命士の平均年収のデータはありませんが、地方公務員の制度上は、役職などの条件が同じであれば給与の男女差はないとされています(※2)。

※1  参考:総務省.「令和4年 地方公務員給与の実態」.“第5表 職種別職員の平均給与額”.
  https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R4_kyuyo_1_03-2.pdf ,
  (参照2024-07-19).

※2  参考:e-Gov法令検索.「地方公務員法」.
  https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261 ,(参照 2024-07-23).

出産・子育てに関わる支援制度

地方公務員である救急救命士は、出産・子育てに関わる支援制度を含めた基本的な福利厚生制度が整っています。具体的には、産前産後休暇(産休)や育児休業(育休)、育児短時間勤務制度(時短制度)、部分休業などです。実際に各制度を活用し、出産・育児を経て職場に復帰した方もいます。

女性としての強みと生かし方

女性の救急救命士が現場で働く強みの一つは、傷病者が親しみを感じやすいことです。女性の救急救命士が柔らかな雰囲気で対応すれば、傷病者が落ち着きやすくなる可能性もあるでしょう。

また医療職は傷病者と接触する機会が多いことから、可能であれば同性の方が対応した方が良いとされています。傷病者が女性だった場合、女性の救急救命士が対応すれば、緊張や苦痛が少し和らぐかもしれません。

さらに、急な出産や婦人科系疾患、子どもの救護といった場面でも女性救急救命士のニーズは高いと考えられます。特に女性救急救命士自身に出産・子育ての経験があれば、妊婦や子どもの傷病者に安心感を与えられる可能性もあるでしょう。

女性が救急救命士を目指す方法

救急救命士を目指すときに、「男性だから」「女性だから」と方法が変わるわけではありません。まず救急救命士の資格を得るためには、国家資格に合格する必要があります。さらに、地方公務員として消防本部で働きたい場合は、各自治体が実施する公務員試験にも合格しなければなりません。

なお救急救命士は女性・男性ともに消防本部で働くケースが多く、民間企業で働く方はごく一部です。救急救命士として消防本部で働く方法は、次の2つです。

以下では、それぞれの方法について詳しく解説します。

専門の養成校で学んで救急救命士になるルート

専門の養成校で学んでから救急救命士になる場合は、高校卒業後、特定の学校で2年以上修学する必要があります。特定の学校とは、文部科学大臣指定の大学・短期大学・専門学校、もしくは都道府県知事が指定する救急救命士養成所です。これらの学校を卒業した後は、救急救命士の国家試験を受験することになります。そして救急救命士の国家試験と消防士の採用試験に合格すれば、晴れて救急救命士として働けるようになります。

このルートの場合は、消防士から救急救命士を目指すときのような「5年以上、もしくは2,000時間以上の実務経験」という活動時間の縛りがありません。また消防士として仕事をしながら勉強をするわけではないので、勉強に集中しやすい方法といえるでしょう。

さらに大学や短期大学を経由して救急救命士になった場合は、「大卒」や「短大卒」といった学歴が得られます。キャリア形成の上で、有利に働く可能性もあるでしょう。

消防士から救急救命士になるルート

消防士になるためには、高校や専門学校、短期大学、大学などを卒業した後、消防士の公務員試験に合格する必要があります。学校は医療関係・福祉関係である必要はなく、学部・学科も不問です。

消防士の公務員試験に合格した場合は、次の条件をクリアすると、「救急救命士養成所」に入所できます。

  • 就職した後に、救急隊員として5年以上、あるいは2,000時間以上の実務経験を積む
  • 所属する消防本部から推薦を得る

救急救命士養成所では、半年以上かけて救急救命士になるための勉強を行います。そして、救急救命士養成所を卒業すると、国家試験の受験資格が得られます。そこからさらに国家試験に合格して、ようやく救急救命士になれるのです。

女性が救急救命士を目指す場合の注意点

救急救命士の現場では力が必要な作業が多く、女性が男性と同じ量の仕事を同じようにこなすのは現実的ではありません。このような身体的な負担は、多くの女性消防士が直面する難しさの一つです。特に女性は筋力で男性に劣るため、意識的にトレーニングし、体力や筋力を維持・向上した方が良いでしょう。

もちろん採用後の研修を経て、働くうちに少しずつ体力が付くことも考えられます。しかしあまりにも体力がないと、救急救命士として勤務し続けるのが辛くなってしまうことも考えられます。救急救命士を目指すと決めたら、勉強と並行して体力トレーニングを始めておくのがおすすめです。

また消防士は地方公務員のため、採用試験には年齢制限があります。自治体によっても異なりますが、受験資格の年齢の上限は26〜30歳未満程度としているところが多いようです。希望する自治体があれば、あらかじめ年齢制限について確認しておきましょう。

救急救命士を選択した女性のキャリアステップ

近年は女性の救急救命士にとって働きやすい環境が整備されつつあり、活躍の場は広がっています。中には、救急救命士として消防署で働き始め、産休・育休を経て職場復帰し、仕事と家庭を両立しやすい課で働いている方もいるようです。

救急救命士の多くが働く消防署の仕事は、多岐にわたります。救急救命士として救急業務に当たる方もいれば、通信指令業務や、予防業務、防災指導などの業務に携わる方もいます。また子どもが小さいなどの理由で交代制勤務が難しいときは、週休二日制で勤務する毎日勤務を選ぶのも一つの方法です。さらに産休や育休、短時間勤務制度など、利用できる休暇や制度を上手に活用し、無理なく働き続けることも大切です。

もちろん女性であっても、副士長、士長、司令補などの昇進試験に挑戦したり、専門的な資格を取得したりしながらキャリアアップしていくことは不可能ではありません。長く救急救命士として働きたい、着実にキャリアを積んでいきたいと考える場合は、早い段階からどのような働き方があり、どのくらいのペースでキャリアアップしていけば良いのかを考えておく必要があるでしょう。

女性が救急救命士を目指すなら、専門の養成学校がおすすめ

責任感や使命感がある、勤勉であるといった特性があれば、女性であっても救急救命士を目指すことが可能です。実際に救急救命士として働く方は男性の方が多いものの、女性も一定数います。

ただし救急救命士は過酷な仕事なので、体力があり、精神面の強い方でないと務まりません。もちろん、救急救命士に必要な知識やスキルを身につけておくことも大切です。

国家試験に効率良く合格するためには、救急救命士に必要な勉強ができる学校に通う方法をおすすめします。

仙台青葉学院短期大学の救急救命学科では、救急現場での実務経験豊富な専任教員の指導により、最短2年間で救急救命士国家試験受験資格を取得できます。また本学科では仙台大原と連携した公務員試験対策を実施。「救急救命士国家試験」と「公務員試験」のW合格に向けて、一人ひとりに合ったサポートを行っています。救急救命士を目指す方は、ぜひ仙台青葉学院短期大学への入学をご検討ください。