保育士を目指すなら大学 、短期大学、専門学校どちらが有利?違いと併せて解説
保育士になるための進学先には、短期大学、大学、専門学校と3つの選択肢があります。それぞれに特徴があり、メリットとデメリットが異なるため、ご自分に合う道はどこかと迷う方もいることでしょう。
本記事では、保育士資格の取得を目指す方へ向けて、短期大学、大学、専門学校の特徴や違いについて比較しました。更にそれぞれのメリットとデメリット、向いている人の特徴まで解説しています。
「将来は保育士になりたいけれど、どこで学ぶのがベストなんだろう?」とお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
保育士を目指す2つの方法
国家資格である保育士の資格を取るには、2つの方法があります。
一つは、厚生労働大臣が指定する「指定保育士養成施設」に入学し、所定の単位を取得して卒業すること、もう一つは、一般社団法人全国保育士養成協議会が行っている「保育士試験」に合格することです(※)。
方法 | 保育士試験受験資格 |
---|---|
指定保育士養成施設を卒業する | 受験の必要なし |
保育士試験に合格する | 指定保育士養成施設以外の短期大学、大学、専門学校を卒業 |
高等学校を卒業しており、保育補助などの実務経験が2年以上 | |
最終学歴を問わず、保育補助などの実務経験が5年以上 |
高等学校を卒業する前の方が保育士を目指すなら、高等学校卒業後に「指定保育士養成施設」への進学がおすすめです。保育士試験を受ける必要はなく、卒業と同時に保育士の資格を取得できます。
指定保育士養成施設以外の短期大学、大学、専門学校を卒業した人や、上記の実務経験を満たしている人であれば、保育士試験を受けるルートで保育士資格を取得することが可能です。試験は筆記試験と実技試験の2段階になっています。
※参考:一般社団法人 全国保育士養成協議会.
「受験資格詳細」.https://www.hoyokyo.or.jp/exam/qualify/detail.html ,(参照2024-07-16).
短期大学、大学、専門学校のそれぞれの違い
指定保育士養成施設には短期大学、大学、専門学校の3種類があります。それぞれの違いを比較してみました。
| 短期大学 | 大学 | 専門学校 |
---|---|---|---|
期間 | 2~3年 | 4年 | 2~3年 |
特徴 | 仕事に必要な知識や技術を学ぶ | 仕事に必要な知識や技術に加えて、短期大学よりさらに幅広くさまざまな知識を学ぶ | 専門職として実践的な知識・技術を学ぶ |
実習開始時期 | 1年生から実習 | 1~3年生から実習 | 1年生から実践メイン |
入試のポイント | 大学よりは難易度が低め | 成績重視で倍率が高いことも | 保育士として働く意欲学ぶ意欲を重視 |
このように、短期大学、大学、専門学校ではさまざまな違いがありますが、取得できる保育士資格はどの養成施設でも同じです。
短期大学に通うメリット、デメリット、向いている人の特徴
実際に短期大学、大学、専門学校にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。まずは短期大学から詳しく見ていきます。
メリット
短期大学で学ぶ主なメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 2年間で保育士資格を得られる
- 地元での就職に強い短期大学が多い
- 専門知識の他に一般教養も幅広く学べる
現在の指定保育士養成施設では、資格取得にかかる期間は2年が最短です。短期大学は在学期間が2年間のため、いち早く保育士としてのキャリアをスタートさせられます。なるべく早く保育士の職に就きたい人にとって、これは短期大学で学ぶ大きなメリットと言えます。
また短期大学は地元での保育士採用に強いところが多く、就職活動に有利な場合もあるでしょう。特に実習などで地域とつながりがある、歴史が長い短期大学などは、求人が寄せられる可能性も高くなります。
加えて短期大学には保育に特化した授業だけでなく、一般教養など他の知識を学べる授業もあるため、幅広い知識を得られる点もメリットです。
デメリット
一方、短期大学のデメリットは次の2つです。
- 日々のカリキュラムがぎっしり組まれることが多く忙しい
- 余裕のあるキャンパスライフを楽しむのは難しい
短期大学では保育以外に、一般教養科目も学びます。そのためカリキュラムに余裕がなく、時間割がぎっしり詰まっていることも珍しくありません。
在学中は資格取得と学習に集中したいのか、時間的に余裕のある学生生活を過ごしたいのか、進路を決める際は、ご自分がありたい姿をしっかりと考えてみましょう。
仙台青葉学院短期大学こども学科のWebサイトでは、1年次と2年次で学ぶカリキュラムの内容、時間割などが詳しく紹介されています。短期大学のカリキュラムの具体的な内容を知りたい方は、ぜひご覧ください。
向いている人
短期大学での学習に向いている人の特徴は、主に次の3つです。
- 最短で保育士の資格を取りたい
- 専門知識の他、一般教養も広く学びたい
- 大学への編入学も検討したい
保育士は学歴より、実務経験や能力が評価される実力の世界です。最短の2年間で保育士資格を取り、キャリアをより早くスタートさせることは、保育士としての評価アップにつながっていきます。
また短期大学なら、卒業後に大学へ編入することもできます。「2年間の学習では物足りない」と感じたときに、大学で学び続ける道があることも頭に入れておきましょう。
大学に通うメリット、デメリット、向いている人の特徴
次に、大学へ通う場合のメリットとデメリット、向いている人の特徴について解説します。3つの養成学校のうちもっとも在学期間が長い大学には、短期大学や専門学校とは異なるポイントがあります。
メリット
大学で保育士を目指すメリットは、主に次の4つです。
- 保育についての知識を深く身に付けられる
- 一般教養など保育以外の幅広い知識を4年かけて学べる
- 保育士以外の進路の選択肢が広がる
- カリキュラムにゆとりがあり、サークル活動など課外活動も充実させられる
大学は短期大学や専門学校と違い、4年間かけてじっくりと学習に取りくみます。保育以外の知識も幅広く学ぶため、卒業後に保育士以外の進路へ方向転換する際もスムーズに動けます。
授業のスケジュールにゆとりがある大学では、短期大学や専門学校に比べて、学習以外に使える時間の余裕が多くなります。サークル活動やアルバイトも頑張りたい人、キャンパスライフを満喫したい人は、大学への進学も一考する価値があります。
デメリット
大学で学ぶデメリットは、次の3つが挙げられます。
- 授業料など総費用が高額になる
- 保育士は学歴による年収の差が少ない
- キャリアのスタートが2年遅れる
大学は在学期間が4年間なので、短期大学や専門学校に比べて総費用が多い傾向にあります。学習の範囲や深さに差があるものの「保育士資格を取得する」という目的だけで比較すると、コストはかなり割高です。
また保育業界では、能力や経験が評価の対象になるため、学歴はそれほど重要視されません。保育士資格には上級や1級などのランクがなく、どの指定保育士養成施設を卒業しても同じ資格です。大卒者の初任給が高めに設定されている保育所もありますが、他業種ほどの大きな差は望めないでしょう。ただし、公務員保育士になる場合はこの限りではありません。詳しくは後述します。
入学当初から「保育士を目指す」と心に決めている場合は、在学期間が長いこともデメリットになり得ます。前述した通り、保育業界は学歴より実力の世界です。同じ年齢の保育士でも、短期大学や専門学校の卒業者に比べて「キャリアが2年浅い」と見なされるかもしれません。
向いている人
大学での学習に向いている人の特徴は、主に次の2つです。
- 大卒の公務員保育士を目指したい
- 卒業後に保育士以外の進路に進む可能性がある
公務員保育士とは、市区町村の地方公務員として業務にあたる保育士のことです。採用後は保育所と雇用契約を結ぶのではなく、公務員の立場で公立の保育所に配属されることになります。公務員は学歴による年収の差が大きいため、公務員保育士になる場合は、大学を卒業するほうが収入面で有利です。
ただし公務員保育士になるためには、保育士資格だけでなく、自治体の公務員試験にも合格することが必要です。給与や福利厚生面で厚遇な公務員は希望者が多く、試験はとても狭き門となります。また公務員保育士の募集は不定期なため、毎年行われるとは限りません。
自治体によって経験年数や保有免許、年齢制限、居住地域などの受験資格が異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。また公務員保育士の試験に合格しても、欠員がなく採用されないケースがあることにも注意が必要です。
保育士以外の道を選ぶ可能性がある人にも、大学はおすすめです。大学は保育以外に、さまざまな知識や理論を幅広く学ぶため、進路変更にも対応しやすくなります。応募条件に「四年制大学卒業」を掲げている企業や職種にチャレンジできることも魅力の一つです。
専門学校に通うメリット、デメリット、向いている人の特徴
次に、専門学校へ通う場合のメリットやデメリットを解説します。専門学校での学びは、短期大学や大学に比べて「保育士を育成する」という意味合いが強くなります。
メリット
専門学校に進む主なメリットは、次の2つです。
- 保育に特化した、実務に直結する知識や技術を学べる
- 卒業後すぐに保育士として活躍できる
専門学校で学ぶのは「保育士として即戦力になるための教育」です。そのため、大学や短期大学より専門的な、実務に直結する技術や知識を学ぶことができます。
実習では子どもたちと遊ぶための音楽や体操、乳児の抱っこやおむつ替えなど、実践的な技術を身につけていきます。「職業としてやっていける」という自信が生まれれば、就職に対する心の準備も整うことでしょう。卒業後、すぐに一人前の保育士として活躍したいなら、専門学校がおすすめです。
デメリット
専門学校で学ぶ デメリットは、次の2つが挙げられます。
- 幼稚園教諭免許も取得したい場合はWスクールが必要
- 保育士以外の道へ進路変更するのが難しい
保育系の専門学校には「指定校」と「併修校」の2種類があります。指定校とは、厚生労働省と文部科学省の指定を受けている学校で、卒業すれば保育士と幼稚園教諭の免許が取得できます。一方で併修校は、厚生労働省のみ指定を受けている学校のことで、卒業時に保育士資格のみ与えられます。
保育系の専門学校の多くは併修校であり、指定校として認定されている専門学校は全国的に非常に少なくなっています。併修校で幼稚園教諭免許を取得する場合は、短期大学等の通信教育課程とのWスクールが必要です。そのため、専門学校の学費とは別に費用がかかり、同じ2年制の短期大学よりもトータルコストが高くなる傾向にあります。
また、専門学校では即戦力となる保育士を育てるため、保育に特化した教育を行います。だからこそ、学んだ知識を他の職業に活かしにくい一面があります。進路によっては、必要な知識や資格を得るため、改めて学び直すことになるかもしれません。
学校に寄せられる求人も、ほとんどが保育士に関わる内容です。専門学校から保育士以外の道へ進む場合は、ご自分で求人を探して就職活動をする必要があります。
向いている人
専門学校での学びに向いている人の特徴は、「絶対に保育士になる」と決めていることです。
前述したとおり、専門学校は即戦力となる保育士を育てるための機関です。他の道を目指すことなく、必ず保育士の職に就くと決めている方には、専門学校が向いています。
専門学校で一緒に学ぶ友人たちは、全員が保育士の道に進む仲間です。目指す方向が同じなので、みんなで刺激し合い、高め合いながら学んでいくことができます。卒業後も仕事の話題で盛り上がったり、悩みを相談し合ったりしながら、絆を深め続けていけるはずです。
専門学校は、保育士としての知識や技術を身に付けると同時に、長く付き合っていける友人との出会いの場にもなります。同じ職業に就く仲間がいれば、ご自分で選んだ保育士の道を、なおさら力強く歩き続けられることでしょう。
短期大学、大学、専門学校の違いを把握して進路を選ぼう
保育士になるための指定保育士養成施設には、短期大学、大学、専門学校の3つがあることが分かりました。取得できる保育士資格は同じですが、特徴や学習内容には違いがあります。
- 短期大学は2年間で資格を取得でき、専門知識と一般教養を身に付けられる
- 大学は4年間で幅広い知識を得られ、進路変更にも対応しやすい
- 専門学校は2~3年で即戦力となる保育士としての力を付けられる
短期大学、大学、専門学校にはそれぞれのメリットとデメリットがあります。進路を決める際は、ご自分が何を学び、どのような学生生活を送りたいのかを軸に持ちましょう。保育士として働きたいという現時点での意欲が、どれほど強いのかも大切なポイントです。
保育士は、未来ある子どもたちの成長を支える職業です。ご自分の目標や考え方、ありたい未来像を見据えながら、夢へ向かって力強く歩んでください。