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作業療法士

【徹底解説】作業療法士の仕事内容や将来性

作業療法士や理学療法士、言語聴覚士といったリハビリ職は、近年需要が高いといわれている職業です。なおそれぞれのリハビリ職によって、実施するリハビリテーションの内容が異なります。

 

今回は、これらのリハビリ職の中から作業療法士にスポットを当て、仕事内容や将来性などを詳しく解説します。

作業療法士とは作業を通じてリハビリを行う専門家 作業療法士の仕事内容 作業療法士の魅力ややりがい 作業療法士の将来性 作業療法士になる方法 作業療法士に向いている方の特徴 作業療法士の平均年収 作業療法士の一日の流れ 作業療法士を目指すなら思い切り学べる環境で

作業療法士とは作業を通じてリハビリを行う専門家

作業療法士は英語で「Occupational Therapist」と書き、「OT」という略称で呼ばれるリハビリテーション職です。

 

食事や排泄、遊び、仕事など、人が行うあらゆることを「作業」といいます。病気やケガ、障害などによって支援が必要な「人」が、住み慣れた「環境」で、その人にとって大切な「作業」に関わることができるように、人・環境・作業すべての側面から支援を行うのが作業療法士です。

 

具体的には、次の3つの改善を図ることが目的であるといえるでしょう。

 

  • 基本的動作能力(運動や感覚、知覚、精神、心肺といった心身機能)
  • 応用動作能力(食事や排泄など日常生活を送る上で必要な活動)
  • 社会的適応能力(就労や就学、地域活動への参加など)

 

また身の回りの環境の調整や、社会資源や各種制度の活用などの促進も含め、その人らしい生活をサポートします。

作業療法士の仕事内容

作業療法士の仕事内容は、基本的に次の3つの訓練です。

1. 基本動作訓練

基本動作訓練では、運動や心肺、感覚、認知、精神など、心身機能に関係するリハビリテーションを行います。病気になったり、けがをした直後(急性期)から開始されるリハビリテーションで、歩行や立ち上がりといった基本的な動作ができるように練習するとともに、すでに身に付けている機能が低下しないよう予防します。

 

具体的には、自助具などを使いながら食べる練習をしたり、自分でトイレに座れるようにしたりといった練習が挙げられるでしょう。

2. 応用的動作訓練

応用的動作訓練は、病気やけがの状態が安定してきた際に行われるものです。食事や排泄、入浴、家事といった、日常生活を送る上で必要な動作のリハビリテーションを行います。

 

患者さんや利用者が退院後に困ることのないように、生活面で必要となる動作が行えるように訓練します。具体的には、靴・衣服の着脱や片手での調理、散歩など、応用的な動作が挙げられるでしょう。

3. 社会的動作能力訓練

社会的動作能力訓練では、就労や就学、地域コミュニティへの参加や、趣味を楽しむためのリハビリテーションを行います。外出して散歩をする練習や、コミュニティに参加する際のサポートなども挙げられます。またパソコンの操作のような就業に役立つ技能の訓練を行うこともあるでしょう。

作業療法士の魅力ややりがい

作業療法士の仕事は、病気やけが、障害などによって日常生活がスムーズに送れない患者さんや利用者に寄り添い、目標の達成に向かってサポートすることです。患者さん・利用者の人生や人間関係を知りながら、患者さんや利用者が望む「自分らしい生き方」に近づけていけたときは、大きな喜びを感じるでしょう。

 

また作業療法士は、理学療法士が担当する「立つ」「歩く」といった基本動作よりもさらに細かい、家事や創作活動などの作業を通して、「生活の質の向上」を目指します。それぞれの理学療法士が持つ個性を発揮し、適切にサポートすることによって、患者さん・利用者が「生きがい」を見出すきっかけを作れるかもしれません。

 

さらに、自分の得意な分野を見つけることで専門性を高めていける点も、作業療法士の魅力であり、やりがいであるといえるでしょう。

作業療法士の将来性

作業療法士は、患者さん・利用者自身の生活を考慮し、その人らしい生き方を総合的にサポートする仕事です。

 

超高齢社会に突入している日本では、高齢者が慣れ親しんだ地域で暮らし続けることが重要視される傾向にあります。そのため医療施設や介護福祉施設などで働く作業療法士の役割も不可欠といえるでしょう。

 

医療機関に入院したり、介護福祉施設に入所したりしなくても、デイサービスやショートステイなどで介護施設や福祉施設を利用する高齢者が増えることは、十分に考えられます。さらに認知症を抱える高齢者が増えると、その分、認知症に対する作業療法の需要が高まるでしょう。

 

以上のことから、今後作業療法士の需要はさらに高まることが考えられます。従って、作業療法士は、将来性のある職業の一つであるといえるでしょう。

 

作業療法士になる方法

作業療法士になるには、作業療法士国家資格が必要です。国家試験を受験するためには、高校卒業後に以下いずれかの養成校で必要な知識や技能を習得し、受験資格を得なければいけません。

 

  • 4年制大学
  • 3年制の短期大学
  • 3年制または4年制の専門学校

 

つまり、作業療法士になりたい場合は、養成校で必要な知識やスキルを学んだ上で、国家試験に合格する必要があります。

 

養成校では、解剖学や生理学、運動学などの医療的な基礎知識を身につけるだけでなく、作業療法士として働く上での専門知識も学ばなければなりません。加えて、実習や臨床実習への参加も必要です。そして作業療法士の国家試験は、これら全ての単位を取得して初めて、受験資格を得られます。

 

なお通信教育では、実習や臨床実習には参加できません。そのため通信教育などの方法で独学するだけでは、作業療法士の国家試験の受験資格を得られません。

作業療法士に向いている方の特徴

作業療法士は表立って何かをするよりも、患者さん・利用者の傍に寄り添って、自然なかたちでサポートする場面が多いと考えられます。患者さん・利用者にとって身近な存在だからこそ、作業療法士自身に適性や能力がないと、適切な対応が難しいかもしれません。働き始めてから「自分には合わないかも」と思うことがないように、自分が作業療法士に向いているかどうかを確認しておきましょう。

 

以下、作業療法士に向いている方の特徴をいくつか紹介します。

1. コミュニケーション能力がある

作業療法士には、コミュニケーション能力が欠かせません。作業療法士は、患者さんや利用者、その家族、医療スタッフと密にコミュニケーションを取る必要があります。患者さんや利用者の状態を詳しく知るためには、まずは患者さんや利用者との信頼関係を築き、状態を聞き出すことが求められます。さらに患者さんや利用者に適切なアドバイスを行うためにも、分かりやすく説明できる能力や、相手に不安を抱かせないような話し方も重要です。

 

病気やけが、障がいの内容によっては、患者さんや利用者とスムーズにコミュニケーションを取れないこともあります。作業療法士には、そのような相手の気持ちをうまくくみ取る能力が必要です。

2. 観察力がある

作業療法士は、患者さんや利用者の体の変化だけではなく、精神的な変化にも気を配り、サポートすることが求められます。患者さんや利用者の様子がいつもと違っているように感じたら声を掛けてみたり、リハビリの内容を変えてみたりするなどの工夫も必要です。

 

観察力がない場合、患者さんや利用者が本来求めているリハビリができず、作業療法士の独りよがりになりかねません。

3. 忍耐力がある

作業療法士の行うリハビリテーションの中には、患者さん・利用者にとって辛かったり、根気が必要だったりするものも多いです。リハビリが辛くて挫折しそうになる患者さんや利用者に寄り添い、忍耐強く対応することも、作業療法士に欠かせないスキルといえます。

 

また困難な状況に対する弱音を吐いたり、作業療法士にきつく当たってしまったりする患者さん・利用者もいるでしょう。作業療法士には、そのようなときでもフラットな姿勢で対応できる能力が必要です。

 

また作業療法士自身が辛い場面でも気分転換できるように、自分の精神面のバランスを取れるような術を身につけておくことも大切でしょう。

4. 豊富なアイデアがある

作業療法士は、状況に応じてリハビリの内容を変えていくケースも少なくありません。もちろん基本動作や日常生活動作のリハビリも行いますが、患者さんや利用者の趣味や要望に合わせて、患者さんの生活に根付いたものや、希望をくんだものを取り入れることもあるでしょう。

 

「こんなことをやったら楽しめそう」「これをすることで〇〇する力が付きそう」など、アイデアが豊富であることも作業療法士に求められることの一つです。

5. 気遣いができる

患者さんや利用者の中には、自分の障がいが受け入れられず、自分の殻に閉じこもってしまう方もいます。また、全ての患者さん・利用者に同じトーンで接するのではなく、一人ひとりの心身の状況に合わせながらコミュニケーションを取ることも大切です。

 

さらに作業療法士は、家族や地域の人々と関わりを持つ機会もあるため、相手の状況や立場を理解しながら関わりを持つ必要もあります。些細なことであっても気遣いができる方は、患者さんや利用者、その家族にかかわらず、所属する施設のメンバーからも信頼を得やすいでしょう。

6. 科学的な知識を生かせる

作業療法士には、患者さん・利用者に科学的な知識を生かして、質の高いリハビリテーションを提供することが求められます。

 

前述の通り、作業療法士は解剖学や生理学、心理学といった科学的な知識を学んだ方でないと、国家資格の受験資格を得られません。実際に働き始めた後も、習得した知識をベースにしつつ、患者さん・利用者一人ひとりに合った治療計画を考え、リハビリテーションを行う必要があります。

7. フットワークが軽い

職種・立場を越え、小まめにコミュニケーションを取れるフットワークの軽さも、作業療法士の適性の一つです。

 

リハビリテーションは、作業療法士同士はもちろん、関係者と連携しながら行います。例えば、効果的なリハビリテーションの実施を目的として、理学療法士や言語聴覚士と情報共有する機会があるでしょう。また患者さん・利用者の生活環境を整えるために、ソーシャルワーカーと情報交換することもあります。

作業療法士の平均年収

年齢や企業、地域によっても異なるものの、作業療法士の月収は30万円前後といわれています。平均年収は400万円を超える程度でしょう。

 

なお作業療法士と言語聴覚士、理学療法士、視能訓練士といったリハビリ職の平均年収は、年齢が上がるにつれて上がっていく傾向です。つまり勤続年数が長くなればその分、年収は増えていくと考えられます。

 

※参考:e-Stat 政府統計の総合窓口.「令和5年賃金構造基本統計調査」.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001213360&tclass2=000001215880&tclass3=000001215884&tclass4val=0 ,(参照 2024-07-22).

作業療法士の一日の流れ

作業療法士の一日の仕事の流れは、職場によって異なります。一例として、病院で働く作業療法士の仕事の流れを紹介します。

時間(例)

内容(例)

8:30~9:00

スタッフミーティング(朝礼)

9:00~12:00

患者さんと一緒にリハビリテーション室にてリハビリテーションを行う。複数人の患者さんのリハビリテーションを行う

12:00~12:30

カルテにリハビリ内容などを記入する

12:30~13:30

昼食(昼休憩)

13:30~15:30

午前中と同様にリハビリテーション室にてリハビリテーションを行う

15:30~16:00

カンファレンス。月1回、多職種で集まり、一人の患者さんに対しての情報共有を行う。家族に参加してもらうこともある

16:00~17:00

患者さんがスムーズに自宅での生活が送れているかを確認し、改善点の提案や生活指導などを行う

17:00~17:30

カルテに午後のリハビリ内容記入や書類の作成をする

 

 

作業療法士を目指すなら思い切り学べる環境で

作業療法士はやりがいがあり、魅力的な仕事です。その一方で、作業療法士の仕事内容は幅広く、患者さんや利用者の心身の状態に合わせた動き方が求められます。また作業療法士の資格を取得するためには、養成校で必要なスキルや知識を学び、国家試験の受験資格を得なければなりません。

 

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