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作業療法士

作業療法士になるには? 資格取得の方法や試験概要、将来性についても解説

今後さらに高齢化が加速する日本では、高齢者のリハビリテーションの需要は高まるとされています。そこで注目されているのが、リハビリテーション職の一つである作業療法士です。

 

作業療法士は、身体的・精神的に障害のある患者さんの日常生活や社会生活をサポートします。

 

本記事では、作業療法士の概要やなるための方法、国家試験の詳細なデータを解説します。記事後半では、作業療法士が活躍できる場や仕事内容、魅力・やりがいなども解説するので、作業療法士を目指している方はぜひ参考にしてみてください。

作業療法士とは? 作業療法士になるには 作業療法士国家試験の概要 作業療法士国家試験の難易度 作業療法士国家試験の合格者数の推移 作業療法士が活躍できる場 作業療法士の仕事内容 作業療法士の魅力・やりがい 作業療法士の給与や待遇 作業療法士の将来性 まとめ

作業療法士とは?

作業療法士(OT:Occupational Therapist)とは、病気や事故により通常の生活を送るのが困難な人をサポートし、身体的・精神的な機能の回復やQOLの改善を支援する医療専門職です。作業療法士の養成施設を卒業した後、国家試験に合格すると資格が与えられます。

 

日本は、これからさらに高齢化が加速するとされています。リハビリテーションの需要が増すので、作業療法士は将来性のある職業の一つです。

作業療法士になるには

作業療法士になるためには、まず高校卒業後に文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する作業療法士の養成施設に入学します。

 

そこで3年または4年間かけて必要な技能や知識を学び、国家試験を受験します。試験に合格すれば、厚生労働大臣から作業療法士免許が交付され、晴れて作業療法士として活躍できるのです。

 

続いての章からは、学校の選び方や学費の目安、適性がある人の特徴、必要な試験・資格について詳しく見ていきましょう。

学校の選び方

作業療法士国家試験の受験資格が得られる学校を選ぶ際は、以下のポイントをチェックしましょう。

 

  • 学校の形態
  • カリキュラムの充実度
  • 国家試験の合格率

 

1つ目のポイントは学校の形態です。大まかに、4年制大学・短期大学・専門学校の3つに分けられます。4年制大学は専門領域以外にも学べる幅が広い、短期大学と専門学校はそれぞれ受験資格を早く得られるなど特徴が異なります。

 

2つ目のポイントはカリキュラムの充実度です。難しい専門課程も基礎からじっくり学べ、演習や実習を通じて知識・技能が定着するようなカリキュラムが組まれているところが良いでしょう。

 

3つ目の国家試験の合格率です。作業療法士の専門課程を修了した後、国家試験に合格して初めて資格を得られます。合格率がなるべく高いところに入学すれば、安心して勉強に取り組めるでしょう。

学費の目安

学費は進学先の種類や立地、カリキュラムの内容により異なります。以下が学費の大まかな目安です。

 

  • 国公立大学:約260万円(標準的に53万5,800円/年)※要検討
  • 私立大学:約500万〜700万円
  • 短期大学・専門学校:約500万〜700万円 

 

4年間の授業料に加えて、入学金や教科書代、実習にかかる費用などもかかる点は念頭に置いておきましょう。

 

3〜4年間で数百万円と、決して安くはない金額がかかります。学費の負担を軽減するために、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金や自治体の奨学金、入学金や学費が免除される制度、国や民間の教育ローンなどを活用しましょう。また、独自の奨学金制度を設けている学校もあります。

適性

作業療法士の適性がある人の特徴には、以下が挙げられます。

 

  • コミュニケーション能力がある
  • 忍耐力と柔軟性がある
  • 意欲的に学ぶ姿勢がある
  • 人と接するのが好きである

 

作業療法士として働く上で、コミュニケーション能力は欠かせません。患者さんと良好な関係を築き適切なアドバイスをする他、さまざまな医療職と関わりながらリハビリを行っていく必要があるためです。

 

リハビリは長期的な計画に基づき進めていくことが多いため、忍耐力が必要となるだけでなく、患者さんの状況に合わせて柔軟に計画を調整する柔軟性も求められます。

 

また意欲的に学ぶ姿勢も不可欠です。医療の進歩は速く、それを患者さんに還元するには、自ら継続的に学んでいく必要があります。

 

さらに、人と接することが好きなことも大切です。患者さんの立場になり、不安に寄り添いながら支援していく人が向いているでしょう。

必要な試験・資格

作業療法士になるためには、作業療法士免許が必要です。先述した通り、高校卒業後に文部科学大臣もしくは厚生労働大臣が指定した学校の課程を修了した後、国家試験に合格すると得られます。

 

日本以外で作業療法に関する養成施設を卒業した人、または外国で作業療法士に該当する免許を取得した人も受験が可能です。

 

なおリハビリに関わる職業にはいくつかあり、作業療法士の資格を取得した後にキャリアアップのために、以下のような資格を新たに取得する人もいます。

 

  • 認定作業療法士:より高い臨床能力が必要となる、作業療法士の上位に位置づけられる資格
  • 専門作業療法士:がんや摂食・嚥下、高次脳機能障害などより専門的な知識・技術を有する専門資格
  • 認知症ケア専門士:認知症の患者さんに対するケアやサポートを習得すると得られる資格
  • 介護支援専門員(ケアマネージャー):必要な介護サービスが受けられるようにサポートするスペシャリスト

作業療法士国家試験の概要

作業療法士国家試験は、理学療法士および作業療法士法に基づき、毎年2月頃に実施されます。重度の視覚障害者を除き、筆記試験のみで合否が決定されます。試験会場は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県および沖縄県のいずれかです。

 

出題範囲は以下の通りであり、幅広い知識が求められるので、十分な対策と勉強量が必要です。

 

【一般問題】

  • 解剖学
  • 生理学
  • 運動学
  • 病理学概論
  • 臨床心理学
  • リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)
  • 臨床医学大要(人間発達学を含む。)および作業療法

 

【実地問題】

  • 運動学
  • 臨床心理学
  • リハビリテーション医学
  • 臨床医学大要(人間発達学を含む。)および作業療法

 

試験は午前問題と午後問題に分かれ、それぞれ100問、制限時間は2時間40分です。単純計算で1問にかけられる時間は約1分半と短いので、時間配分や解く順番がとても重要です。模擬試験を繰り     返し行い対策をしましょう。

 

受験に関する書類は、例年12月初旬から1月上旬までに提出する必要があります。

作業療法士国家試験の難易度

作業療法士国家試験の合格率は、毎年80%程度です。新卒に限定すると90%を超える年もあるので、合格率だけ見ると「難しくはない試験」に思えるかもしれません。

 

しかし先述した通り、幅広い知識が求められます。基礎医学や臨床医学、リハビリに関する基礎的な知識はもちろんのこと、それらを応用させて解答する問題も出題されます。

 

十分な知識と技能が得られる学校で学び、しっかりと対策をしていくことが重要です。

作業療法士国家試験の合格者数の推移

直近5年の作業療法士の受験者数と合格者数の推移は、以下の表の通りです。

 

 

受験者数(うち新卒者)

合格者数(うち新卒者)

合格率(うち新卒者)

2024年(第59回)

5,736人(5,019人)

4,822人(4,583人)

84.1%(91.3%)

2023年(第58回)

5,719人(4,809人)

4,793人(4,390人)

83.8%(91.3%)

2022年(第57回)

5,723人(4,861人)

4,608人(4,311人)

80.5%(88.7%)

2021年(第56回)

5,549人(4,895人)

4,510人(4,345人)

81.3%(88.8%)

2020年(第55回)

6,352人(4,795人)

5,548人(4,515人)

87.3%(94.2%)

 

 

作業療法士が活躍できる場

作業療法士が活躍できる場は、病院や介護・福祉施設     など幅広いです。

 

  • 病院
  • 介護施設・福祉施設

 

病院にはリハビリを必要とする患者さんが多く入院しています。急性期・回復期・維持期で行うリハビリは異なるので、個々の患者さんに合わせたリハビリプログラムを組むことが必要です。

 

老人ホームや障害者支援施設などの介護施設・福祉施設でも作業療法士の需要はあります。社会復帰や機能改善を目指し、利用者に寄り添いながら業務を進めていきます。

作業療法士の仕事内容

作業療法士の仕事内容は、主に以下の3つに分けられます。

 

  • 基本動作訓練
  • 応用的動作訓練
  • 社会的動作能力訓練

 

基本動作訓練とは、運動機能や心肺機能、感覚、認知、精神など心身機能に関するリハビリです。病気やけがを患った直後(急性期)から開始されるもので、歩行や立ち上がりなどの基本的な動作の能力が失われないように支援・サポートします。

 

応用的動作訓練とは、病気やけがの状態がある程度良好になった時期から行われるリハビリです。食事や排泄、入浴、家事などのADL(Activities of Daily Living)やIADL(Instrumental Activities of Daily Living)を高い水準でこなすためのリハビリを行います。

 

社会的動作能力訓練とは、就労や就学、社会復帰のためのリハビリです。コミュニティに参加して社会活動を行ったり、趣味を楽しんだりできるようにトレーニングを行います。

 

作業療法士の仕事内容に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しているので併せて参考にしてください。

 

https://seiyogakuin.ac.jp/column/23118/

作業療法士の魅力・やりがい

作業療法士の魅力・やりがいは、リハビリを通じて病気やけがで身体的な機能制限があった患者さんが、日常生活をスムーズに送れるようになることです。また、その先にある「自分らしい生き方」を実現するためのサポートができたときは、特に大きなやりがいを感じられるでしょう。

作業療法士の給与や待遇

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の年収は以下の表の通りです。

 

月給

年間賞与

年収

30万9,000円

71万4,400円

432万5,200円

 

上記はあくまでも平均であり、性別・年齢・雇用形態、経験年数によって異なります。

 

国税庁の調査「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は460万円(対前年比0.4%増、1.9万円の増加)でした。全職業と比較すると、作業療法士の平均年収はやや少ないと感じるかもしれません。

 

しかし、就職先で実績を積む他、作業療法士以外の資格を取得することでキャリアアップ・年収アップを目指せます。

 

なお、待遇や福利厚生、昇給の条件などは勤務先により異なります。

 

 

作業療法士の将来性

作業療法士を目指すに当たって気になるのが、その将来性です。

 

内閣府の発表によると、作業療法士の数は2021年時点で10万人を超えています。資格保有者が増えていますが、日本は、世界的に見ても高齢化が深刻な問題となっています。高齢者の数が増えているため、安心して生活を送れるように支援・サポートしていくことが欠かせません。そのため、医療機関や介護福祉施設で働く作業療法士のニーズが増しています。

 

また入院している患者さんだけでなく、ショートステイサービスやデイサービスを利用する方もいるため、今後は需要が供給を上回ると考えられます。

 

作業療法士の仕事内容やなる方法、向いている人の特徴、将来性に関してはこちらの記事でも詳しく述べているので、併せて参考にしてください。

 

https://seiyogakuin.ac.jp/column/23118/

まとめ

作業療法士は、病気や事故により通常の生活を送るのが困難な人をサポートし、身体的・精神的な機能の回復やQOLの改善を支援する専門職です。高校卒業後に作業療法士の専門課程を修了し、国家試験に合格すると免許を取得できます。

作業療法士のやりがい・魅力の一つは、患者さんが社会復帰するのを見届けることができ、さらにその人の「生きがい」を支えることができる点です。将来的に需要の増加が見込まれるので、興味のある方はぜひ目指してみましょう。

仙台青葉学院大学のリハビリテーション学部作業療法学専攻では、「その人らしい生活」を支援するスペシャリストである作業療法士になるためのカリキュラムを組んでいます。1年次から4年次まで演習や実習を通じて実践的なスキルを身に付けつつ、充実した国家試験対策授業で確実に知識を深められます。

作業療法士を目指している方は、ぜひ仙台青葉学院大学にお問い合わせください。